楽しかった記憶に苦しい記憶を上書きして、
泣いてばかりだと嘆く私。
少しだけの裏側で、私は全てを求めている。
向けられた刃先に、私が畏怖することはなく。
むしろ彼との距離が遠いことを残念に思った。
来ないメール、繋がらなくなった電話。
唇に触れられた昨日、指先が遠い今日。
「またね」の意味は「さよなら」だとわかっているはずなのに。
君を嫌おうとした歩数だけ、
君を忘れるまでの道のりは延びている。
ちか、ちかちか、ちか。
点いたり消えたりの感情が煩い。
君が投げた空白を貪る。
私はその中の痛みに溺れ、もがくけれど
息を切らした口元は、いつも微笑んでいる。
麻痺していた、求めることを許される感覚。
世界はもう真っ白ではない。
けれどまだ、真っ黒でもない。
逃げることが好きなくせに、鈍足。